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今月の節税Q&A

事業承継税制 非上場株式を贈与した場合の納税猶予の特例

令和4年9月

Q:社長である私が保有する自社の株式を後継者に贈与したいのですが、株価が高く贈与税の負担が大きくなります。非上場株式を贈与した場合の贈与税の納税猶予の制度があると聞きました。内容を教えて下さい。

 

A:非上場株式を贈与した場合の納税猶予の特例とは、後継者である受贈者が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式を贈与により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税について一定の要件のもと、その納税が猶予される制度です。

 

特例を受けるための主な要件

    1. その会社が、令和6年(2024年)3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、先代経営者の退任時期や後継者の決定を含めた株式の贈与計画の認定を受けること。
    2. その会社が、贈与の時において一定の要件を満たす「特例認定贈与承継会社」であること。
    3. 後継者である受贈者が、贈与の時において以下の要件に該当すること。
      • 会社の代表権を有していること
      • 18歳以上であること
      • 役員の就任から3年以上を経過していること
      • 後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
      • 後継者の有する議決権数が、後継者と特別の関係がある者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること(後継者が1人の場合)
    4. 先代経営者等である贈与者が、贈与の時において以下の要件に該当すること。
      • 会社の代表権を有していたこと
      • 贈与の時において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの中で最も多くの議決権数を保有していたこと
      • 贈与時において、会社の代表権を有していないこと

 

納税が猶予されている贈与税を利子税とあわせて納付することとなる主な場合

この特例を受けて贈与税の納税が猶予された場合において、以下の事例に該当する場合には、猶予されていた贈与税と猶予されていた期間に応じた利子税を納付する必要があります。

    1. 制度適用後、5年以内に次の事由に該当する場合
      • 制度の適用を受けた非上場株式等の全部もしくは一部を譲渡又は贈与した場合(次の後継者にこの規定の適用に係る贈与をした場合を除く)
      • 後継者が会社の代表権を有しなくなった場合
      • 会社が資産管理型会社に該当した場合(一定の要件を満たす場合を除く)
    2. 制度適用後、5年を経過後に次の事由に該当する場合
      • 制度の適用を受けた非上場株式等の全部もしくは一部(一部の場合は、譲渡等をした部分に対応する贈与税と利子税を納付)を譲渡又は贈与した場合(次の後継者にこの規定の適用に係る贈与をした場合を除く)
      • 会社が資産管理型会社に該当した場合(一定の要件を満たす場合を除く)
        ※資産管理型会社…総資産のうち、現預金・株式等・ゴルフ会員権等の価額が70%以上の会社

 

継続届出書の提出

この特例の適用を受けた場合には、引き続きこの制度の適用を受けるために「継続届出書」を下記の時期に税務署に提出する必要があります。

    1. 制度適用後5年以内…毎年提出
    2. 制度適用後5年を経過後…3年ごとに提出

 ※「継続届出書」を期限までに提出しない場合は、猶予されている贈与税の全額を利子税とあわせて納付しなければなりません。

 

この特例を活用することにより、事業承継にかかる税金の負担を軽減することができる場合があります。

 

今回の内容は事業承継税制の概要となります。特例を受けるためには会社、贈与者及び受贈者の状況に応じて慎重に検討する必要があります。

 

詳しくは税理士法人髙木会計までお気軽にお問い合わせください。(伊藤)