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今月の節税Q&A

令和5年度税制改正による電子帳簿保存法の見直しの概要

令和5年6月

:令和5年度税制改正において電子帳簿保存法の内容が改正されたと聞きました。具体的にどのような改正があったのでしょうか。

 

:電子帳簿保存法とは、 税法上保存などが必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書等(国税関係書類)」を紙ではなく電子データで保存することに関する制度をいい、3つの制度に区分されています。

電子帳簿等保存
スキャナ保存
電子取引データ保存

 上記、3つに区分されており、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、は希望者のみが電子データで保存すればよいのですが、③電子取引データ保存に関しては、法人及び個人事業主は対応が必要となり、

それが、令和6年1月1日から始まります。今回は電子取引データ保存に関する主な改正事項についてご紹介し、電子取引データの保存方法について見ていきます。
※電子帳簿保存法関係につきましては、国税庁HPをご参照ください。

 

(1)検索機能のすべてを不要とする措置の対象者が見直されました。

税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにしている場合に検索機能の全てを不要とする措置について、以下のとおり対象者が見直されました。

イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。

ロ  対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。

 

(2)令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は令和5年12月31日をもって廃止されます。

(参考) 令和5年12月31日までにやり取りした電子取引データを「宥恕措置」を適用して保存している方 は、令和6年1月1日以後も保存期間が満了するまで、そのプリントアウトした書面を保存し続け、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば問題ありません。

 

(3)新たな猶予措置が整備されました。

次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。

イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要です。)

ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

【※国税庁HP:電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~(令和5年4月)(PDF/521KB)】より抜粋

 

今回の改正によって、令和6年1月1日からの電子取引データの保存方法は次の4つに区分されます。

電子帳簿保存法の原則通りの保存方法
新たな猶予措置
売上高5千万円以下の者の検索要件不要措置
書面の提示等の求めに応じる者の検索要件不要措置

それぞれの保存方法を表にまとめると以下のようになります。

令和5年度税制改正による、電子取引データの保存についてご紹介しました。今回の緩和措置の利用を推奨するものではなく、原則通りの保存要件に従い保存していく事が望ましいと考えます。

【参考文献】 発行者:㈱ぎょうせい 令和5年5月1日発行 著書:月刊「税理」5月号 電子帳簿等保存制度の要件緩和と実務対応への影響

 

詳しくは税理士法人高木会計までお気軽にお問い合わせください。(澤藤)

※この記事は令和5年6月時点での税法に基づき記載しています。