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今月の節税Q&A

適格請求書(インボイス)の保存が省略されるケース

令和5年8月

:令和5年10月1日からインボイス制度が開始されて、適格請求書(インボイス)の保存が消費税の仕入税額控除の要件になるとのことですが、インボイスの保存が省略されるケースはないですか?インボイスでの事務負担を軽減できればと思います。

 

:インボイスの保存要件が省略されるケースとして、主に以下の事例が挙げられます。

① 簡易課税制度を選択する場合

② 公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による
  旅客の運送 (公共交通機関特例)

③ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

④ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に
  該当するものに限ります。)の購入(古物商特例)

⑤ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するもの
  に限ります。)の取得

⑥ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の
  棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑦ 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に
  回収される取引 (②に該当するものを除きます。)

⑧ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

⑨ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
  (郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

⑩ 「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」を選択する場合

⑪ 「免税事業者からの仕入れに係る経過措置」を選択する場合

 

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【概要説明】

  • 消費税の仕入税額控除について

 まず、インボイス制度が関係する消費税の仕入税額控除の規定は、「売上に含まれる消費税」から「経費に含まれる消費税」を減算し、納付税額を減らすものになります。
現行(インボイス制度前)の消費税仕入税額控除は、原則、「帳簿」及び「請求書等」の保存が要件とされますが、インボイス制度においては、「請求書等」に代わり、一定の記載事項を具備した「適格請求書(インボイス)等」の保存が要件とされることとなります。
ただし、先述①~⑪の事例については、インボイスの保存が要件とはされず、一定の事項を記載した「帳簿」のみの保存(①・⑪を除く)により消費税仕入税額控除が認められることとなります。

 

  • 簡易課税制度を選択する場合 (①について)

 簡易課税制度は、課税売上高から仕入税額控除を算出するため、インボイスの保存は要件とはされません。したがって、今後の簡易課税の有利選択では、インボイスに係る事務負担軽減も考慮して検討することが考えられます。

 

  • 公共交通機関特例他に該当する場合 (②・③について)

 公共交通機関の1回の取引額が税込3万円未満の運賃が対象となり、当該運賃には旅客の運送に直接的に附帯するものとして収受する特別急行料金、急行料金、寝台料金等を対価とする役務の提供も含まれます。なお、航空機に関しては公共交通機関特例の適用は無く、領収証に運行日の記載されていない点を考慮して、領収証と搭乗券を保管する必要があると考えられています。また、公共交通機関特例を適用する場合には、「帳簿」の摘要欄に「3万円未満の鉄道料金」などを記載(※)する必要があります。
(※)「帳簿」の摘要欄に、☆など記号を記載し、さらに、その記号が公共交通機関特例適用を意味することを別途表示する方法によることも可能です。

 

  • 古物商特例他に該当する場合 (④・⑤・⑥について)

 古物商特例に関しては、棚卸資産に該当するものの購入に限られ、自ら使用する消耗品の購入には適用されません。また、「適格請求書発行事業者でない者」からの場合であり、インボイス発行事業者からの購入の場合にはインボイスの保存が必要になります。

 

  • 出張旅費等・入場券等 (⑧・⑨について)

 出張旅費等・入場券等を適用する場合にも、「帳簿」の摘要欄に「出張旅費等」「入場券等」など記載(※)する必要があります。
(※)「帳簿」の摘要欄に、◆や▲など記号を記載し、さらに、その記号が「出張旅費等」「入場券等」を意味することを別途表示する方法によることも可能です。

 

  • 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置 (⑩について)

 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が、1回の取引額が税込1万円未満の取引について、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間に限り、帳簿の保存のみで消費税仕入税額控除ができる取扱いです。
 なお、令和11年(2029年)10月1日以後、当該取扱いが無くなることを見越してインボイスの保存にも対応していく必要があります。

 

  • 免税事業者からの仕入れに係る経過措置 (⑪について)

 インボイス制度開始から一定期間は、インボイス発行事業者以外の者との取引に関して、帳簿及び区分記載請求書等(インボイス制度前の請求書の記載様式)を保存し、さらに「帳簿」の摘要欄に「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」などと記載(※)することにより、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは、仕入税額相当額の80%相当額、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは、仕入税額相当額の50%相当額の消費税仕入税額控除ができる取扱いです。
 なお、令和11年(2029年)10月1日以後、当該取扱いが無くなることを見越した対応も必要になります。
(※)「帳簿」の摘要欄に、♤や♧など記号を記載し、さらに、その記号が当該経過措置適用を意味することを別途表示する方法によることも可能です。

 

2023年7月31日時点の法令情報に基づき作成しています。

詳しくは税理士法人髙木会計までお問い合わせください(松井)