令和6年12月
Q:令和6年は、お正月から能登半島地震が起き、各地で水害等もありました。
そこで、災害等が起きた時の確定申告の規定はございますか?
A:「雑損控除」もしくは「災害減免法による所得税の軽減免除」の規定があります。
「雑損控除」は、災害の他、盗難や横領にも適用できる所得控除の規定です。
「災害減免法による所得税の軽減免除」は、災害に際して、所得税額が減額もしくは
免除される規定です。
Ⅰ.雑損控除
雑損控除は、納税者及び総所得金額等48万円以下の同一生計親族が所有する生活に通常必要な資産が、下記の災害等により損害を受けた場合において、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連したやむを得ない支出金額を証明する書類の添付により、下記《算式》に基づく金額を所得控除できる規定です。
イ)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
ロ)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
ハ)害虫などの生物による異常な災害
ニ)盗難
ホ)横領
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
《算式》
次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額が所得控除されます。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
(注1)「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
(注2)「災害等関連支出の金額」とは、次のような支出をいいます。
①災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額など
②盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出など
(注3)「保険金等の額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額をいいます。
《雑損控除の対象にならない資産》
棚卸資産もしくは事業用固定資産等または「生活に通常必要でない資産」は、雑損控除の対象になりません。
(注)「生活に通常必要でない資産」とは、例えば、別荘など趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)も含まれます。)や貴金属(製品)や書画、骨董など1個または1組の価額が30万円超のものなど生活に通常必要でない動産をいいます。
《雑損控除の繰越》
雑損控除がその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間(特定非常災害に係る損失の場合には5年間)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
(注)「特定非常災害」とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。
Ⅱ.災害減免法による所得税の軽減免除
災害減免法による所得税の軽減免除は、納税者及び総所得金額等48万円以下の同一生計親族が所有する住宅や家財について、災害等によって受けた損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く。)が、その住宅や家財の時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下の場合において、その災害について雑損控除の適用を受けず、確定申告書にこの規定を受ける旨、被害の状況および損害金額を記載して確定申告書を提出するときに、下記表の通り、所得金額が500万円以下の場合には所得税の全額が免除され、所得金額が500万円を超え750万円以下の場合には所得税額の50%相当額が、所得金額が750万円を超え1,000万円以下の場合には所得税額の25%相当額が、軽減されます。
イ)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
ロ)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
ハ)害虫などの生物による異常な災害
(注) ここでいう「所得金額の合計額」とは、所得税法第22条《課税標準》に規定する総所得金額(純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失および特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除後)、分離課税の土地等に係る事業所得および雑所得の金額、特別控除後の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、申告分離課税の上場株式等に係る配当所得等の金額、上場株式等に係る譲渡損失および特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除後の申告分離課税の株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除後の申告分離課税の先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額および退職所得金額の合計額(これらの所得の金額につき所得税法第69条《損益通算》の規定の適用がある場合には、その適用後の金額の合計額)をいいます。
《住宅または家財の範囲》
(1)住宅の範囲
「住宅」とは、自己または扶養親族が常時起居する家屋をいいます。
※1 常時起居する家屋である以上は、必ずしも生活の本拠であることを必要としません。したがって、たとえば、2か所以上の家屋に自己または扶養親族が常時起居しているときは、そのいずれをも住宅とします。
※2 現に起居している家屋であっても、常時起居しない別荘のようなものは、住宅としません。
※3 常時起居している家屋に附属する倉庫、物置等の附属建物は、住宅に含めます。
(2)家財の範囲
納税者(扶養親族を含む。)の日常生活に通常必要な家具、什器、衣服、書籍その他の家庭用動産をいうものとし、書画、骨とう、娯楽品等で生活に必要な程度を超えるものは含まれません。
ワンポイント!
雑損控除の適用にあたっては詐欺被害に該当しないか?災害減免法の適用にあたっては半壊以上の被害であるか?など、判断が必要になることから、盗難届出証明願兼証明書、罹災証明書などの証明書類の用意や、被害の写真を撮っておくなど、客観的な証拠資料の用意が重要になります。また、損害金額を計算する際に、取得価額を用いる為、住宅や車両の売買契約書を普段から適切に管理しておくことも重要になります。(なお、住宅の取得価額が不明な場合の簡便的な計算方法もあります。)
その他、雑損控除と災害減免法は併用適用できず、雑損控除は3年間の繰越規定がありますが、災害減免法には繰越規定が無い為、有利判定をしながら、いずれの規定を適用するかを決めることとなります。(なお、雑損控除を適用した後に、修正申告または更正の請求により災害減免法の適用に替えることも可能です。)
詳しくは税理士法人高木会計までお問い合わせください。(松井)
※この記事は令和6年11月時点での情報に基づき記載しています。今後内容が変更となる可能性がございますのでご了承下さい。