令和4年2月
Q:飲食店を経営しています。コロナ自粛のあおりを受け、出前サイトの利用を考えています。
出前サイトを利用するにあたり、経理処理などで気を付けることはありますか?
また、節税対策がありましたら教えてください。
A:近頃は、新型コロナウイルス感染防止の観点から外食が自粛され、出前サイトの利用が増えていますが、出前サイトの経理処理で気を付ける点は、次の3点になります。
① 相殺取引
② 消費税率の区別
③ 簡易課税の事業区分
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ここでは、黒のデリバリーバックが目印の米国系出前サイトを例にして、①~③を説明していきます。
① 相殺取引
この米国系出前サイトの場合には、料理売上・配送手数料収入・チップ収入の合計額から、配送料・出前サイト手数料を相殺した差引金額が通帳に振り込まれます。
相殺取引になることで、例えば、消費税課税事業者の判定、「基準期間における課税売上高1,000万円超」に用いる課税売上高は、通帳に振り込まれる差引金額ではなく、配送料・出前サイト手数料を差し引く前の売上総額になる点に気を付ける必要があります。
② 消費税率の区分
消費税率の区別は、アルコールの提供が無い場合には、以下の通りであり、軽減税率8%と10%を区別して経理処理を行う必要があります。
《収入項目》
料理売上:軽減8%
配送手数料収入:10%
チップ収入:不課税(※)
(※)チップ収入は、支援金であることから、対価性の無い取引として消費税の課されない不課税取引と判断されます。
《支出項目》
配送料:10%
出前サイトへの手数料:10%
③ 簡易課税の事業区分
消費税の簡易課税に係る事業区分については、先に配送手数料収入は「運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業を除く)」として、『売上の50%相当を納付消費税額とする』第5種事業に区分されます。
料理売上は、通常、飲食店業の第4種事業に区分されますが、出前の場合には、事業形態により取扱いが異なることに注意する必要があります。具体的には、通達(※)に基づいて判断され、出前サイトの利用は通達に定める出前に該当し、さらに「飲食のための設備」の有無により取扱いが異なることとなります。
「飲食のための設備」がある場合には、『売上の40%相当を納付消費税額とする』第4種事業と判断され、「飲食のための設備」を持たない出前専門店の場合においては、『売上の30%相当を納付消費税額とする』第3種事業と判断されます。
なお、基準期間における課税売上高が5,000万円を超える場合や、原則課税を選択する場合には、上記事業区分の判断は不要になります。
(※)消費税基本通達13-2-8の2(注)
-
- 食堂等が行う飲食物(店舗において顧客に提供するものと同種の調理済みのものに限る。)の出前は食堂等としての事業であり、第四種事業に該当するが、食堂等が自己の製造した飲食物を持ち帰り用として販売する事業は、製造小売業として第三種事業に該当するのであるから留意する。
- 飲食のための設備を設けずに、自己の製造した飲食物を専ら宅配の方法により販売する事業は、製造小売業として第三種事業に該当することとなる。
〔節税対策〕
飲食店が出前サイトを利用する場合には、材料費以外に、配送料・出前サイト手数料が発生する為、出前サイトを利用しない場合に比べて費用が多くなります。その為、飲食設備を有する飲食店であり、売上全体に占める出前サイト売上の割合が大きいケースでは、消費税の課税方式について、簡易課税よりも原則課税が有利になる可能性があります。
【 検証 】
消費税の課税方式の選択に関しましては、2年間の継続適用ルール等があり、実際は多角的な検討が必要となりますが、ここでは単純化する為、飲食設備を有する飲食店が受けた出前サイトのオーダーをモデルに、配達料・出前サイト手数料が発生することにより、簡易課税よりも原則課税が有利になることを示します。
《収入項目》
料理売上:税込1,500円
(軽減8%、税抜1,389円、①消費税111円)
配送手数料収入:税込300円
(10%、税抜272円、②消費税28円)
《支出項目》
材料費:162円
(軽減8%、税抜150円、③消費税12円)
配送料:569円
(10%、税抜517円、④消費税52円)
出前サイト手数料:308円
(10%、税抜280円※、⑤消費税28円)
[原則課税]
①消費税111円 + ②消費税28円
▲ ③消費税12円▲ ④消費税52円
▲ ⑤消費税28円 = 原則課税47円
[簡易課税]
①消費税111円 ×40%( 第4種事業 )
+ ②消費税28円×50%( 第5種事業 )
=簡易課税58円
原則課税47円 > 簡易課税58円
∴ 原則課税有利
ワンポイント! 飲食設備を有する飲食店は、売上全体に占める出前サイト売上の割合が大きい場合には、消費税に関し、簡易課税よりも原則課税が有利になる可能性がある!
詳しくは税理士法人高木会計までお問い合わせください。(松井)